「テネット」の作品概要
「メメント」、「ダークナイト」シリーズ、「インセプション」、「インターステラー」、「ダンケルク」を過去に手掛けてきた、今世紀、最も注目すべき監督と言っても過言ではないほどの監督、クリストファー・ノーランの最新作「テネット」が公開された。
本作は、ノーランの作品の醍醐味でもある「時間」を主軸にしており、タイムトラベルでもタイムリープでもなく、「逆行する時間」を描いている。
本記事では、ノーラン特有の一度見ただけでは理解が追いつけない物語や設定について解説し、それに加え自分なりの考察も書いている。
キャスト
ジョン・デヴィッド・ワシントン(主人公/名もなき男)
主人公である「名もなき男」を演じたのは、俳優デンゼル・ワシントンの息子であるジョン・デヴィッド・ワシントン。
元アメリカンフットボール選手という強靭な肉体から放たれるアクションは見物である。
ロバート・パティンソン(ニール)
名もなき男の相棒役には、「ハリー・ポッター」シリーズのセドリック・ディゴリー役や、「トワイライト」シリーズで脚光を浴びた、ロバート・パティンソンが演じている。
エリザベス・デビッキ(キャット)
セイターの妻役、そして物語の重要人物であるキャットを演じたエリザベス・デビッキ。
彼女は、「華麗なるギャツビー」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」などに出演している。
ケネス・ブラナー(セイター)
名もなき男の敵役となる人物は、「ダンケルク」にも出演をしていたケネス・ブラナーが演じている。
ヒメーシュ・パテル(マヒア)
名もなき男やニールの行動を手伝う工作員役として、「イエスタデイ」の主人公で注目を集めたヒメーシュ・パテルが演じている。
クレマンス・ポエジー(バーバラ)
逆行する現象を調べている研究員役としては、「ハリー・ポッター」シリーズでフラー・デラクール役を演じた、クレマンス・ポエジーが演じている。
また、ノーラン作品に常連のマイケル・ケインもワンシーンながら、本作にも出演していた。
あらすじ
ウクライナのオペラハウスで起きたテロ事件に、CIAの特殊部隊として出動していた「名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)」。
その任務の最中、時間を逆行する弾丸により、ある男に命を助けられる。
その男のリュックには、オレンジのコードが下げられていた。
しかし、任務は失敗に終わり、名もなき男はテロリストに捕まってしまう。
口を割らないためにも、毒薬で自殺を図ろうとするが、鎮静剤にすり替わっており、何とか一命を取り留める。
目を覚ました男は、ある男からミッションを与えられる。
それは、「未来からの敵と戦い、世界を救う」というものであった。
そして、「テネット」というワードを覚えおくように言われる。
名もなき男は未知の敵を探すことになる。
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名もなき男はCIAの研究員であるバーバラ(クレマンス・ポエジー)のもとで、時間を逆行する弾丸のことを知る。
その弾丸の出所を調べるため、ニール(ロバート・パティンソン)と協力することになる。
そして、武器商人であるセイター(ケネス・ブラナー)が関わっていることを知る。
まずは、セイターに取り入るため、セイターの妻であり画商のキャット(エリザベス・デビッキ)を訪ねるが、信用を得ることができず失敗に終わる。
だが、名もなき男はキャットがセイターに贋作を売ってしまったことで囚われの身になっていることを知る。
まずは、キャットの信頼を得るため、飛行機上に秘密裏に保管されている贋作を処分する計画に出るが、時間を逆行する何者かに阻まれてしまう。
捜査を進めていくうちに、セイターの真の目的が、未来人が過去にバラバラにして隠した巨大な時間逆行装置「アルゴリズム」を集め、地球上の時間を逆行させることであると知る。
セイターは既に、9つ中8つを手に入れており、残すは「プルトニウム241」のみであった。
「プルトニウム241」の場所を突き止めた、名もなき男とニールは4台の巨大なトラクターで輸送中の車を挟み撃ちにし奪うが、未来からやってきたセイターに再度奪われてしまう。
さらには、キャットがセイターに逆行する弾で撃たれてしまう。
そして、最終局面。
セイターは癌を患っており、自分が死ぬと同時に故郷であるスタルスク12で「アルゴリズム」が起動するように仕組んであった。
名もなき男とニールはスタルスク12でアルゴリズムの起動を阻止しに、キャットはセイターが自ら命を立つことを阻止すべく、過去に遡る。
名もなき男はアルゴリズムの奪還するミッション中に、オペラハウスで助けられたオレンジのコードの男に、またも助けられる。
しかし、その男は名もなき男を庇い命を落としてしまう。
なんとか、男はアルゴリズムの奪還に成功し、作戦を成功させた男たちは、再び「アルゴリズム」をバラバラにして過去に隠すことに。
別れ際、男がニールに過去に差し向けたのはいったい誰なのかと聞く。
ニールは笑いながら、それは未来の「名もなき男」本人であることを告げ、「また会おう」と去っていく。
去り際にニールが背負ったリュックにはオレンジのコードが。
それを見た男は、今まで自分を救ってくれたのは未来からきたニールだったと気がつく。
その後男は、新たな現在に戻り未来を救うべく生きていく。
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逆行する世界について詳しく解説
そもそも、時間の逆行とはどういったことなのか、時間が逆行するとどういったことが起こるのか解説しよう。
本編では、鏡ように左右対称のガラスで仕切られた場所に回転する装置があり、ガラス越しに自身の姿が確認できなければ、装置から出られなくなるという設定である。
予告編では、波が逆に打っていたり、ひっくり返った車が元通りになるシーンが登場しており、アメコミのキャラクターなど誰かの能力のようにも見えるが、実は時間を逆行しているだけであり、過去に遡っているだけである。
そのため、逆行している自分や装置を通った人間以外は全て逆に動いているように見える。
逆行している世界では、肺に外気を取り込むことができないため、酸素マスクが必須になる。
燃え盛る炎は、熱エネルギーが逆に働くので凍っていく。
過去の自分に直接触れてしまうと、分子の逆行が起き互いに消滅してしまう。
また、逆行する世界では物理 も逆に働くので車の運転も難しくなる。
最終局面で、名もなき男いる順行の赤チームと、ニールがいる逆行の青チームになってミッションに取り掛かるが、銃撃や爆撃が順行と逆行とが重なり合って、今まで観たことがない映像経験を体験することができる。
ノーランと時間についての考察
ノーランの映画と「時間」は大きく密接していると考える。
過去作の「メメント」では、10分前の記憶をなくしてしまう主人公が体中にメモ書きをしており、常にそのメモを軸に物語を遡りながら進行する。
「インセプション」では、夢の中で起こる出来事を時間の流れとともに表現している。
「インターステラー」では、相対性理論によって引き起こされる時間のずれを表現していた。
「ダンケルク」では、陸・海・空の3つの視点を、1週間、1日、1時間という異なる時間軸で描いていた。
今回の「テネット」でも、逆行する時間を描いている。
このように、時間を軸に物語を表現することを好み、日常的には考えることのない時間軸を見事に映画的に表現している。
きっとノーランの中では、時間という概念や、見えている景色が違うようにも思える。
だが、過去作でも本作の「テネット」でも、ある時間軸の1点に着目して描いているのではないかと僕は気がついた。
例としてあげるのであれば、「インターステラー」でブラックホールの説明をする際に、紙に2つの丸を描き、それを重ね合わせボールペンで突き刺した演出があったが、そのような感覚である。
時間は前にも後ろにも、もしかすると横にも流れているかもしれないが、ある視点から見るとそれは1つの出来事であり、未来でも過去でもなく、1つの時間である。
「インターステラー」では、娘のマーフの部屋を物語の軸とし5次元という空間までもある日の出来事にしていた。
「ダンケルク」では、3つの視点をダンケルク海岸という1つの地点に着眼させており、「テネット」では、冒頭のオペラハウスのシーンと最後のスタルスク12での激戦が同じ日であった。
これは僕の個人的考えであるが、ノーランという人物は「時間は有限であるが、人生においてのターニングポイントであったり、重要な出来事をいかに大切にし、それに気づくことができるか」を映画を通じて伝えようとしているのではないだろうか。
まとめ
これまで、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、クリント・イーストウッド、黒澤明、マーティン・スコセッシ、アルフレッド・ヒッチコックなど数多くの名監督と呼ばれる監督はいたが、クリストファー・ノーランも確実に映画史に名を残す監督となるだろう。
クリストファー・ノーランという人物がいる時代に生まれてきて本当によかったと思う。
あと30年くらいは映画を製作し続けてほしい。
画像引用元:公式ページ
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